やがて君になる 13話(最終回)感想&考察&評価!2期はある?”乗り換え”の真意と優れていた”手”の描写
第13話「終着駅まで/灯台」
ー先輩、そろそろ乗り換えですよ?(侑)
終わってしまいました。最後まで水と列車をベースにした描写が光りました。物語としては続きをやってもらわないと困るレベルの出来です(やっと円盤届いたよ!)
というわけで、やがて君になる 第13話(最終回)「終着駅まで/灯台」の感想と考察になります。作品全体を通したネタバレがあるので、未視聴の方はご注意を!
(注意:管理人は原作未読です。ご了承を)
やが君 13話(最終回)あらすじ・ネタバレ
燈子は澪のお墓参りをした際、”行く末”のことを思い描きます。そして、Echoには次々と人が訪れます。脚本の相談をする侑とこよみに続いて燈子と沙弥香がやって来ます。
沙弥香は燈子に澪の人となりを尋ねます。「私から見た姉のことしか話せない」という燈子に、沙弥香は「燈子が見ていたお姉さんもその一部だ」と伝えます。
劇が終わったら”どこ”に行ける?と自問する燈子に、侑から「遊びにいきませんか」とメッセージが届きます。一方、Echoでは理子が都という「人」が好きであることが明かされました。
侑と燈子は水族館に出かけます。イルカショーの後のやり取りで、侑は燈子が簡単に好きと言うことの理由を問います。燈子は「自分が誰かを好きになれることで安心できる」と返しました。
ペンギンショーの直前で、侑は劇の練習をすることを提案します。侑は誰かを選ぶ必要はない、自分は”あなた”しか知らないという台詞を伝えます。
2人で水族館を巡り、侑を見失った燈子に侑は手を差し伸べます。侑は燈子を導きます。出口へ、深海に注ぐ光の方向へ。それでも、侑の表情は憂いたものでした。
帰りの電車で、侑はこよみに劇のタイトルを「君しか知らない」にすることを提案します。眠った燈子の手を侑は握ります。
列車には夕焼けが注ぎ、乗換駅にたどり着こうとするのでしたーー。
以上です。
13話の感想と考察
分かりやすい描写と、もやっと答えが出ない描写がいくつか…。最後の最後にまとまらない考察になりそうな予感しかしませんがご了承を。
喫茶店での攻防:知りえること、知り得ないこと
まずはAパートのメイン行事であった喫茶店でのやり取りについて。様々な人物たちによる「攻防」が見られました。
①沙弥香vs都
笑ってしまったのがこのシーンでした。
7話で沙弥香は都相手に、それとなく自分自身の悩みを相談しています。喫茶店に訪れた沙弥香と燈子を見て都は…
「仲イイね」
…沙弥香じゃなくてもむっとしますね(笑)
しかし、沙弥香もただでは転ばず、市ヶ谷の話になった際に意味ありげな表情で都を煽るしぐさを見せます。
どうにもキャラ間の緊迫感が強い「やが君」の中で、こういうシーンが見られてとてもよかったです。
②沙弥香vs燈子
この場面は、後半の侑と燈子のやり取りと完全に対比したものになっています。真正面から燈子を変えようとする侑、どこまでも寄り添って話を聞く沙弥香。
このシーンで心が痛むのは、沙弥香は何一つ間違ったことはしていないし、かつ一般的には最善と思われる問いかけや応答をしているということです。
客観的に見ると、「優しい」と言われるのは沙弥香のはずで。でも、燈子が「優しい」と評するのは侑に対してです。
製作陣はどこまでも沙弥香に現実を突きつけます。
詳しくは1つ下の見出しで考察しますが、沙弥香は燈子の肩に手を触れられず、代わりに燈子の手を握ります。去り際も手を伸ばしますが燈子には届かず、EDでは1人部屋にいる沙弥香の姿が…
くどいようですが、沙弥香がいなければ燈子は既に「壊れて」しまっていた可能性もあります。ずっと燈子を支えてきた沙弥香が負けそうになるシーンの連続は「恋愛」というものの本質を表現しているのかもしれません。
③理子vs都
てっきり、都から告白したのかと思いきや、実は理子からだった?と思わせる描写に驚きを隠せません。理子のセリフはとてもいいもので
「女の人に興味はあまりないけど、今こうして付き合ってるのは都なわけで…。例外というか、特例というか…その」
同性とか異性ではなく、「人」として都のことが好きだと伝わってくるセリフです。その後の都のいじりも含めて2人の関係性の良さがうかがえます。
ちなみに、理子がやってくるのはお店が「closed」になった後。「closed」という言葉には、理子にしか見せない都の内面という意味合いも含まれているように感じます。
触れたり、触れられなかったり~1話との比較
「燈子に触れる沙弥香・侑」が最終話では特に多く描かれました。
まずは沙弥香。
沙弥香は、燈子の話を聞く際に、肩に手を触れようとしましたが触れられず、代わりに手を握ります。そして、帰り際に彼女の瞳には燈子に伸ばしている手が描かれました。
答えが出なかった解釈の1つが、沙弥香はどうして肩に触れられなかったのに、手を握ることができたのかという部分です。
考えてみた解釈は以下の2つで
①「肩」に触れるより「手」に触れた方が気持ちが伝わると考えたから
②「手」に触れることは劇の練習で慣れていたため、「手」に触れた
となります。①は沙弥香の「優しさ」を表したもので、②は沙弥香の「苦しい胸の内(=思うように一歩燈子に踏み出せない姿)」を表している…という解釈です。
ただ、12話を見直すと燈子の肩を抱いて支える沙弥香の姿も映っていました(もちろん手を握っているシーンの方が多いですが)。となると、シンプルに①案かなぁ…。
ちなみに、水族館で侑は燈子の肩に手を触れて会話をしています。
単純に、沙弥香と燈子、侑と燈子の距離感の違いを表現するための描写だった(侑は燈子の肩に手を乗せられるが、沙弥香はそこまで至っていない)とも取れそうです。
そして、極めつけはやっぱりこのシーン。
自分は「神描写!」とか「神回!」という言葉は滅多に使わないのですが、この描写には度胆を抜かれました。
手を伸ばしても触れられない、触れることのない沙弥香を上手に表現していますし、その後うなだれるように落ちていく手の演出もすごいです。
そして、目をつぶり再度目を開いた沙弥香の目にはもう燈子は映っていません。まるで伸ばした手がウソだったかのように。それでも、彼女の瞳はうるんだままでした。
一方で、侑と燈子の触れ合いです。侑は燈子の肩を掴み正面から向きあいます。そして、侑を見失った燈子に侑は手を差し伸べ光の指す方へ誘います。
前者の「肩を掴む」の部分は、その行為自体よりも正面から「今のあなたしか知らない」と告げたことが、”燈子を変えたい”と決意した侑の意志が表現されたもののように感じました。
後者は何よりも1話で燈子が侑の手を握ったシーンと重なるものがあります(ちなみに、1話とは立ち位置が変わっているだけで、侑=左手、燈子=右手はそのままの構図です)。
当ブログでは何度か「光=特別」と考察してきましたが、13話で射した光は単純に水中に射す希望とかそういう言葉に置き換えた方がしっくりくると思います。
もしくは、燈子にとっての光は侑そのもの、つまりサブタイトルにあるように燈子にとっての「灯台」は侑のことなのでしょう。
対して、暗い影は燈子を表していて。影(燈子)に差し込む灯台の光(侑)があるからこそ、燈子は明るい場所に出ることができます。
1話で侑を「特別」の入り口に引っ張っていったように、今度は侑が燈子を「七海燈子」にする番です。
水族館に誘ったこともそうですが、
侑と燈子の立ち位置が侑の決意によって完全に逆転したことを示す描写
だと思います。
それでも、2人の行く末は前途多難であることも示されています。
「光」ばかりに目が集まりますが、その先の出口には影が落ち、暗くなっているように見えるシーンもありました。
「出口」には光が射しているのか、それとも…。現時点では誰にも分かりません。
終着駅と「乗り換え」の意味
姉であることを目指し続けていた燈子。そんな彼女の苦悩が何度もセリフになって現れます。
姉の代わりに生徒会劇をやり遂げた後の自分はどうなるんだろう?という自問。
「侑が好きであること以外は”自分ではない”」と告げた葛藤。
Aパートのサブタイトルにもなっている”終着駅”というフレーズは、これらの点を踏まえて考えるといくつかの解釈ができます。
①終着駅=姉の演技をすることの「完成」
②終着駅=生徒会劇の「終わり」
どちらで解釈してもよさそうですが、いずれにしてもこのまま燈子が澪として生きていくとたどり着く「果て」を示しているのは間違いありません。
燈子1人では終着駅に着いた後の行動を見出すことができません。引き返すことも、乗り換えることもできるはずなのに。
燈子が「終着駅に行くという選択肢しか持っていないこと」は劇の練習中に「分からないって…どうすればいいんですか!」と語る彼女のセリフからも読み取れます。
しかし、侑は「そろそろ乗り換えですよ」と告げます。澪として生きる終着駅に向かうのではなく、途中で乗り換えて燈子として生きる道への乗り換えを提案しています。
このシーンの侑の凄いところは、「終着駅に向かうことを悪いこと」だととらえていないことです(「このまま起こさないのも悪くない」と侑は回想しています)。
澪になり切ろうとしても。劇が終わっても。最後の駅までたどり着いてしまっても、そこから道を見つけていけばいいーという侑の声が聞こえてくるようです。
手を握って、影が2人の近づきを表現します。侑が「乗り換え」と言い、電車の扉が開いたとき、外には目一杯の夕焼けと光が降り注いでいました。
燈子は寝ているから気が付きませんが、確かに
乗り換え駅は光(=希望)で満ち溢れている
ことを感じられます。
その他の描写まとめ
これ以上書いていくと収集が付かなくなりそうなので(笑)、何点かの描写について書いて締めたいと思います。
燈子の3カットとちぎれた羽
考察が難しい描写Part2です。アバンで映ったお墓参りのシーンが難しいです。
ポイントは2つあり
〇燈子を3つの視点から映したカット
〇不自然に流れる2つの羽
です。
前者については、「演劇」をかぶせる意図があったように感じます。
燈子の人生は澪を失ってからは澪(の幻想)を追い求めるために使われています。言うなれば、燈子は澪役の”役者”と言い換えられます。
だからこそ、ドラマや映画のように、七海燈子という役者を映すために、様々な角度から燈子のカットを残したのでは…という風に考えました。
後者はさっぱりですが、この羽は燈子のことだと考えるのが最も自然でしょうか。
この時点での燈子は「自分」という本体がありません。そして、この虫(セミ?)も羽だけであり「本体」がありません。
羽が川に流されれば、いつかゴールへたどり着きます。この境遇も終着駅に流れ込もうとしている燈子と重なるものがあります。
でも、セミは死んでしまっているだろうけど、燈子はそうではありません。
燈子の本体には「侑が好き」という唯一無二の気持ちがあります。その気持ちが燈子自身を蘇らせたーと考えると、13話全体における1つの流れが見えてくる気がします。
隠れる目のカット
細かいところですが、最終回を通して徹底されていた描写です。
自分の気持ちに嘘をついたり、何も言えなくなるシーンでは各キャラの目元が隠れていました。その最たるものが「私には何もないのだから…」と言われ、それを認めようとする侑のシーンです。
一瞬目が隠れますが、「でも…」と燈子を変えようと再決意したとき、再び彼女の目が映し出されています。
劇のタイトルの意味
劇のタイトルは「君しか知らない」。隠された部分を補足すると、「(今の)君しか知らない」というのが正式なタイトルになるのかな?
侑が自分への決意を新たにした文面にも、燈子へのメッセージにも見えます。
新しい脚本を燈子がしっかり読んで、沙弥香も目を通したときどんな反応を示すのかが楽しみでしたが…。そこは2期へお楽しみということで。
最終回まで見た上での評価、総括
もはや自分自身が評価する立場にありませんが、とても素敵な心に残る作品でした。描写や風景を心情にマッチさせる描写はアニメの中でもトップクラスだったと思います。
あとは1話1話のサブタイトルが本当に秀逸でした。そのどれもがストーリーにマッチしている(しかも後で伏線のように生きてくる)のってすごい、すごすぎる!
どのキャラにとってもどこまでも残酷なストーリー。見ていてハラハラしますし、ものすごく引き込まれるアニメです。
本当に「百合って何よ?」という人にも絶対に見てほしい作品です。
原作が途中で終わっているとのことでしたが、自分は非常に良い締め方だったと思います。
これを普通に締めてしまうとただの「投げっぱなし」になりますが、”乗り換え””光”をうまく使うことで、今後の2人の未来が見通せる余韻のあるエンドになっていました。
また、ここまで読んでいただいた皆さんにはぜひ、記事下の多彩で深いコメントに加え(本当に物凄い考察だらけでびっくりします)、当ブログでも何度も紹介させて頂いているygkmさんとづかさんの記事も読んでいただきたいです。
見どころ:徹底した「光と影」の考察に加え、自分が記事で触れなかった燈子が駅のホームから一歩踏み出した”あのシーン”も考察されています。
見どころ:終着駅は「発着駅」でもあるという事実からの考察は圧巻。そして、自分では答えが出なかった沙弥香と侑の燈子への触れ方の違いの考察が非常に納得できます。
あとは皆で円盤を買って2期を応援しようね…!これで終わるのは生殺しすぎる。
冒頭でも述べた通り、ようやく我が家にも届いたので予定通り年始にでも一本記事をあげたいと思います。そちらもよろしくです。
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アニメ「やがて君になる」13話感想まとめとご挨拶
というわけで、やがて君になる 13話の感想・考察記事でした。
終わってしまいました。ここまでコメントをいただいたのは「がっこうぐらし!」以来でしたし、フォロワーさんも多く増え、たくさんTwitterで拡散もしていただきました。
当ブログの「やが君」記事を見てくださった皆さん、本当にありがとうございます!
そして、コメント欄が一切荒れる気配すら無かったというのは快挙に近いと思っています。それもこれも、全て皆さんのお陰です。
コメントから気づくことも多々あり、その1つ1つが自分のモチベーションでした。感謝してもしつくせません。
※ここ数日コメントの返信が止まっていて申し訳ございません!読ませてはいただいていますので、今日明日で返信させていただきます。もう少しお待ちくださいませ…。
何よりも原作者の仲谷さんはじめ、
原作関係者の皆様。アニメを作って下さった関係者のすべての皆さま。こんな素晴らしい作品をありがとうございました!!
原作に手を出すかはまったくの未定です。絶対に2期があると信じているので、13話より先には手を出さないでおこうと思っていますが…。
ちなみに、今期他作品(「リリスパ」「色づく」「青ブタ」「あかねさす」)の記事と、次クールのおすすめ作品の紹介記事は以下からどうぞ。
それでは、この辺で失礼いたします。
また別の作品やコメント欄でお会いできることを祈っています!