アニメのおすすめなどを語るブログ

主にオリジナルアニメの感想と考察を管理人が書いて楽しんでいるブログ。皆様のコメントをどしどしお待ちしています!

やがて君になる 9話 感想&考察!”スタートできない”侑の心情描写

第9話「位置について/号砲は聞こえない」

f:id:rakutenpocket2:20181201041819p:plain

ー心臓の音がする。私のじゃない。先輩の音だ。だってこれじゃ、早すぎるから…(

 

侑が色々な人と交流を図っていたのがGOOD!でした。自分に問いかける言葉、そして号砲を”聞こえなくした”のはいったい誰?

というわけで、やがて君になる第9話「位置について/号砲は聞こえない」の感想と考察になります。9話までのネタバレがあるので、未視聴の方はご注意を!

(注意:管理人は原作未読です。ご了承を)

やが君 9話のあらすじ・ネタバレ

侑は体育祭の横断幕を探しに体育倉庫へ向かい、燈子と出会います。燈子は侑にキスを何度もせがみます。「甘えすぎ」という侑に燈子は体育祭が終わったらご褒美がほしいと告げます。

体育祭が始まり、各々がそれぞれの仕事と向き合います。侑は休憩中の廊下で、聖司と遭遇します。侑は燈子のことは好きではない、自分は誰も好きにならないと告げます。

f:id:rakutenpocket2:20181201020818p:plain f:id:rakutenpocket2:20181201020822p:plain

 

聖司は「自分と侑は同じだ」と表面上は伝えますが、侑の話を聞き、表情を見ることで「自分と侑は違うと思う」という感情を持ちます。

いよいよ、部活対抗リレーが始まります。卓から聖司へ、侑へバトンが渡り沙弥香へもバトンが渡ります。そして、走者は最後の燈子へと変わりました。

f:id:rakutenpocket2:20181201020840p:plain f:id:rakutenpocket2:20181201020848p:plain

 

燈子を応援する侑には、次第に燈子の姿しか映らなくなります。周囲の風景も、色も全てが消えます。終わってから生徒会の敗北に気が付くほど、彼女は燈子に夢中になっていました。

体育祭が終わり「ご褒美」の時間がやって来ます。侑は燈子にキスをしようとしますが、”ここを越えてはいけない”という思いから、自分からキスをすることを止めます。

f:id:rakutenpocket2:20181201020924p:plain f:id:rakutenpocket2:20181201020927p:plain

 

燈子は「私の好きにする」と告げ、侑にキスをします。

そのキスは舌を絡め、何度も行われます。侑は聞こえた鼓動を自分のものではなく、燈子のものであると回想します。それは、まるで自分の気持ちに蓋をするようにーー。

f:id:rakutenpocket2:20181201020945p:plain

以上です。

9話の感想と考察

侑が強い女の子すぎて、見ているこちらが辛くなります。そして、9話も「演出の妙」がたくさん見られました。

侑の気持ちの変化:「水」と「線」の描写から

まずはAパートの最大の見どころともいえる、侑と聖司のやり取りから。

2人がいる「水中」表現

1話や2話で見られた、水の表現が再登場しました。

2話で描写された深海の表現をおさらいしておきましょう。

www.anime-kousatsu.com

自分が知らない「特別」を燈子が知っていることへの侑の心情を表現する際に深海の世界が描かれました。

 

海の底から光に向けて手を伸ばす侑。実はこの海の表現は1話でも登場しています。

 

1話では恋愛トークをする2人の友人が明るい海の中にいる一方で、侑はその隣の暗い海の中にいる描写が施されていました。

(当ブログ:やがて君になる 2話 感想&考察!2人だけの世界と3種類の「ずるい」 - アニメのおすすめなどを語るブログより)

 

何度も地上の光を求めていることから、侑にとって暗い水の中にいることは「特別」が分からないことを表現しているものでした。作中でいう光は「特別」の比喩表現と捉えてよいでしょう。

では、9話ではどのように映っていたでしょうか。

f:id:rakutenpocket2:20181201022651p:plain

 

1話や2話で描かれた深海から光が差し込む描写に比べると、かなり明るい場所にいます。そして、あのときとの決定的な違いが

「暗い」(=影の部分)所にいるのが聖司で、「明るい」所にいるのが侑

という対比表現です。

 

1・2話では暗いところに侑が座っており、特別が分からないという彼女の心情を示していました。しかし、彼女は既に光が差す影では無い場所に立っています

1個下の侑のモノローグの考察でも述べますが、間違いなく彼女は「特別」を知ってしまいました。

それは、彼女の発言からも分かりますが、こうした描写からも読み取ることができる作りになっています。

 

聖司は「侑と自分は違う」と感じていましたが、似ているように見える2人の立ち位置は全く異なります。聖司と侑の思いは一度もシンクロしたことがありません。

スタート地点の「”特別”を知らない」ことは同一の心情ですが、聖司は”特別”を知ろうとしていないのに対し、侑は”特別”を知りたい少女でした。そこからのアプローチが2人の間では全く違うわけです。

侑は聖司と同じであると語っていましたが、それは自分の気持ちに蓋をするような自己弁明に近いものを感じました。

 

それでも、侑にとっての光(=特別)はとても難しくて。光に対して眩しそうにする侑の姿から、彼女の苦しい心情が読み取れます。

5話で心臓が選んでくれたら、と願ったのは他でもない侑自身でした。近づきたいのに、近づいたら壊れる”特別”は、手をかざさないと見えない眩しすぎる光のような存在といえるのではないでしょうか。

ぶれ始めた侑の歩み

侑の感情が露わになった表現です。侑が歩いている場所に注目してみましょう。

f:id:rakutenpocket2:20181201024915p:plain

 

これまで、きっちりと線の上を歩いてきた侑が、線からそれた場所を歩いているのです。

線の上を歩んでいる描写については、前回の記事でも紹介した「づか」さんの記事が非常に分かりやすいので、再掲します。

侑は6話で境界線上を一人で歩いています。その先はT字路。侑がぶれない人間であること、孤独、分岐点を迎えた状態を示しています。

 

一方で沙弥香は、7話ラストに燈子と境界線を隔てて歩く描写が。燈子と沙弥香は交わらないけれども、進む先は同じ、とも見えます。道の先は描かれていません。

 

侑と比べると、これでもかというくらい対照的です。

(引用:やがて君になる 7話 感想&考察 ~佐伯沙弥香とコーヒー/侑と沙弥香の対比~ - 三十路会社員のレート奮闘記より)

 

ぶれない侑がぶれはじめていることの証明が、侑の歩みにあります

「線の上を歩いているのって7話で偶然描かれただけじゃないの?」と思った方は、ぜひ2話を見直してみてください。2話のアバンで廊下を歩く侑は線上を通っています。

 

もちろん、演出として「侑がぶれ始めた」ことを示す役割もありそうですが、侑が”特別”を知り、動揺している彼女の心情描写と捉えることも出来そうです。

毎回線の上をきっちり歩くことから、彼女のこの行動は癖である可能性があります。

いつもしていることを、無意識のうちにしなくなるぐらい今の彼女は自分の心の動きに驚き、動揺しているとも読み取れるのではないでしょうか。

燈子の問いかけと侑のモノローグ

続いては、リレーと大問題の体育倉庫のシーンです。

「侑からしてほしいかも、キス」の真意とは

自分が9話で結論が出なかった箇所です。燈子は「自分のことを好きにならない侑」が好きであり、そうでなくなってしまえば侑を拒絶する人間です。

このことは、8話でも十二分に表現されているので改めて説明する必要はないでしょう。

www.anime-kousatsu.com

 

「嬉しい」と言われるだけで敏感に反応する燈子です。侑が自分から燈子にキスをした暁にはとんでもない血祭りが待っていそうです(笑)

では、燈子はなぜ”侑から”キスをしてほしいとせがんだのでしょうか。”侑から”求めることを燈子は望んでいないはずなのに。

 

いくつか考察案を出してみます。

①侑が自分からキスをしてくるかを試した

最初に思いついたのはこちら。燈子は侑を試したのでは?という案です。

もし、2度目の体育倉庫で侑が自分からキスをしてくることがあれば、侑のことを拒絶しようと燈子は考えたのかもしれません。侑への選択肢の提示です。

侑自身も「ここを超えてはいけない」と考えていますし(もっとも、この侑の心情は”自分が元に戻れなくなる”という意味合いの方が強いと思われます)、侑が燈子の提示したこの難問を突破した、という見方もできます。

 

②あくまで「起点」は燈子の言葉なので、今回は侑からキスをしても問題ない判断から

一応の本命案。今回に関しては侑が自分から発した言葉ではなく、あくまでも燈子が「侑からしてほしい」と告げたことによる行動です。

そのため、燈子の”お願い”によって侑からキスをするだけ…なので、侑が自分から求めたということにはならない、とも考えられそうです。

ん?何でそんなことをしてまで燈子は侑にキスをしてほしかったかって?

そりゃあ、燈子さんが侑に襲われるようなシチュエーションでキスをされたかったからじゃないですかね。七海燈子、そういうとこやぞ!(風評被害)

 

③「身体」と「心」の違いから

3度目の見直しで思いついた案です。あくまでもキスは「身体」の重ね合わせに過ぎず、”好き”という「心」の動きとは別々に考えているのかな、と。

しかし、この案は非常に説得力が低い気がします。燈子はあくまで、好きだからキスをしたいのであって身体と心がリンクしている行動を見せています。

侑が自分で語っていたように気持ちよさを求めるための言動なのでしょうか。②の案とも通ずるものがありそうです。

 

④燈子の心情の変化(”侑から”好きになってもいいという想いへの変化)

一番無さそうで、これだったら衝撃を覚える案です。少なくとも、燈子の心情が変わった描写は見られなかったですよね…。

 

うーん。やっぱり難しいですね。やっぱり色々なシチュエーションを楽しみたくなった燈子先輩の言動、ということにしておきましょう(笑)

自分に蓋をするモノローグ

侑が”特別”に近づいたのでは?という疑惑が確証に変わったのが9話でした。

リレーのシーンの描写は反則級です。侑の目には燈子しか映らず、周囲の音もすべて消えました。もしかしたら、この瞬間が”特別”から”好き”に変わったタイミングなのかなとまで思います。

 

その流れのまま燈子との例のシーンに入るわけですが…。9話の締めにもあたるラストシーンで侑のモノローグを聞くことができます。

f:id:rakutenpocket2:20181201033644p:plain

(それらを心地よいと感じるのは、ただの当たり前で特別なんかじゃないはず。心臓の音がする。私のじゃない。先輩の音だ。だってこれじゃ、早すぎるから…)

 

聖司とのやり取りでも「寂しくない」と言ったり、このモノローグといい9話の侑は自分の気持ちに蓋をするために、自分に言葉を言い聞かせている場面が多々あります

聖司との会話中に、ペットボトルを握る描写がありましたが、それはあふれ出る気持ちを押さえつける意図があったのかな、とも思います。

 

これまでも散々述べてきましたが、どう解釈しても侑は「特別」を知ってしまった少女です。そして、早すぎる心臓の音は間違いなく侑のものなのです。

侑と燈子の体勢から、侑は燈子の胸に顔をうずめていません。残念ながら侑に燈子の鼓動音を聞くことができないのです。

それでは、侑に聞こえている鼓動の音は誰のものなのかといえば…自分自身の鼓動に他なりません

 

言い聞かせても止まらない鼓動音。皮肉にも、5話で彼女が感じた「心臓が選んでくれたら」のフレーズとリンクした表現になっています。

止まらない思いは言葉よりも早く、身体的な動きとして表面に出てしまいました。

沙弥香の表情、沙弥香の想い

9話で心を掴まれた表情はこちら!バトンを受け取る沙弥香です。

f:id:rakutenpocket2:20181201034420p:plain

 

すかっとするような表情です。8話で侑と思いを共にしたこともあり、バトンミスなんて絶対に起こらないと確信しているかのような表情です。

見事につながったバトンは最終走者の燈子へと受け継がれます。燈子の表情も自信に満ちた表情で。それでも、沙弥香は燈子の本当の姿を知っています。

 

沙弥香(燈子…もう、いつもいつもそうやって!)

 

弱かった燈子は、繋がれたバトンを受け取りアンカーとして走ります。

周囲にいるのは運動部の男子生徒ばかり。完璧を演じる燈子と、それを期待する沙弥香。そんな2人の関係性が短い時間でしっかり描かれた一場面でした。

サブタイトルを考察する(9話編)

最後にちらっとサブタイトルの考察をしておきます。3話や6話のサブタイに比べると、意味合いを汲み取るのは比較的平易なタイトルになっています。

 

Aパートの「位置について」は、侑の想いがスタートに達したという意味合いでしょう。特別を知った侑の想いを一言で表すとこのフレーズになるのかも。

Bパートは「号砲は聞こえない」。恋をするスタートラインには立っているのに、いざ走りだすことができない侑の苦しい心情を表しているタイトルになっています。

 

「号砲は聞こえない」というのは言い換えると、侑が号砲(スタート合図)を聞こえないよう振る舞っていることと同義です。

走りだしてしまえば、燈子はいなくなってしまうから。侑が自分の気持ちを押さえつけるような心情描写がたくさん見られた9話にぴったりなタイトルになっています。

 

当ブログにも何度かコメントをいただいている「ygkm」さんも9話サブタイについて、ほぼ同様の考察をされています。

自分は聖司とのやり取りの考察で、「水」にしか触れていませんが「ガラス」にも触れている考察があります。ぜひ、合わせてチェックしてみてはいかがでしょう。

yagakimi.hatenablog.jp

8話を振り返る~他ブロガー様の記事といただいたコメントから

8話の記事でも多くのコメントをいただきました。そのうちの、いくつかを紹介させていただきます。

まずは、上でも紹介したygkmさんの「やが君 考察」様。手の描写と、「緑滴る」という言葉への考察がとても面白い記事になっています。

yagakimi.hatenablog.jp

 

続いて、記事中でも引用したづかさんの「三十路会社員のレート奮闘記」様。自分が行ったアジサイの考察に加え、信号機の持つ役割を考察している部分が特に必見です。

zuka-poke.hatenablog.com

 

次はいただいたコメントを。「とんす」さんのコメントです。

そういえばご存知かもしれませんが、青の紫陽花の花言葉には「あなたは美しいが冷淡だ」というものもあるそうですね。

 

燈子は冷淡とは違うように感じますが、ある種の残酷さは持っているのでぴったりなようにも感じます。

やがて君になる 8話 感想&考察!アジサイ描写と握れなかったその手 - アニメのおすすめなどを語るブログコメント欄より)

青のアジサイのマイナス面の花言葉がこちらになります。燈子のずるさ、残酷さが青色のアジサイとして表現されているように感じますね。

 

本当はすべてのコメントを紹介したいのですが、これ以上記事が長くなるとアレなので(笑)、この辺で。ぜひ8話の自分の記事のコメ欄で確認いただければと思います。

もちろん、自分の記事も読んでほしいのですが、ぜひ皆さんから寄せられたコメントも合わせて読んでほしいです!(コメントも大募集中!)

色々な視点を持つことで、より作品が楽しめるはずです。

アニメ「やがて君になる」9話感想まとめと10話に向けて

TVアニメ「やがて君になる」オリジナルサウンドトラック

TVアニメ「やがて君になる」オリジナルサウンドトラック

 

というわけで、やがて君になる9話の感想記事でした。感想なので、記事中ではあまり述べませんでしたがDキスの破壊力たるや…!

 

合わせて、円盤を購入することを決めました。特典(どうやら演出の狙いとかも明かされるらしい)が楽しみなのもありますが、2期の放送を応援する意味合いが強いです。

これは完全に持論ですが、本当に2期を放送してほしいアニメは円盤を買って応援すべきだと思っているので…。このアニメをたった13話で終わらせるのは違うでしょう。

 

というわけで、2期が放送されるその日まで、自分は原作を購入して読むのは待とうと思っています(笑)

残すはあと4話。楽しみに次回を待ちましょう。それでは、この辺で。

 

【追記:10話の感想記事はこちらから!】

www.anime-kousatsu.com