やがて君になる 6話 感想&考察!サブタイトルの意味と河原の描写考察
第6話「言葉は閉じ込めて/言葉で閉じ込めて」
ーそんなこと…死んでも言われたくない。(燈子)
何となく考えていたことではありましたが。それでも、燈子のやっていることは残酷すぎやしませんか。もとより、彼女こそが一番の被害者なのですが。
というわけで、やがて君になる 第6話「言葉は閉じ込めて/言葉で閉じ込めて」の感想と考察になります。6話までのネタバレがあるので未視聴の方はご注意を!
(注意:管理人は原作未読です。ご了承を。)
やが君 6話のあらすじ・ネタバレ
定期試験も終わり、生徒会の日常が戻ってきます。会議の中で劇の脚本の話題になります。侑はこよみのことを思い浮かべますが、その場では何も語りません。
その後、侑は沙弥香と2人になります。沙弥香からこよみの小説のことを言い出さなかったことを指摘され、劇をやることも燈子の意思で決まったことだと告げられます。
「燈子が生徒会劇に拘る理由は7年前の生徒会長にある」と言われ侑は7年前の情報を探ります。侑は当時の会長が燈子の姉である七海澪であることを突き止めます。
澪は交通事故で既に亡くなっていました。そして、澪が亡くなり、劇も行われない年が続いていたようです。侑は燈子が澪のように振舞うべく行動していることも知ります。
真実を知った侑は燈子に「劇をやめて”そのままの燈子”でいるべきだ」「そういう先輩の方が好きだという人もいる」と告げます。
燈子の返事は「そんなこと死んでも言われたくない」というものでした。皆の前で特別でいることは辞めないし、侑がいなくても劇はやるー。燈子が自分の言うことに耳を傾けないことに侑は絶望します。
侑が用意した答えは「先輩のこと、好きにならないよ」というものでした。離れた二人の距離が再び縮まります。自分が燈子を好きになると彼女は離れてしまう、そんな想いの告白でした。
Cパート。燈子の独白です。”好き”は相手を束縛する言葉だから、”好き”を持たない侑に燈子は惹かれていました。だから燈子は侑に言います。「好きだよ」とー。
以上です。
6話の感想と考察
どこかのアニメ考察ブロガーが5話の感想記事でこう書いていました。「6話からしばらくは”安定期”に入るだろう」と。その人の作品の見る目のなさよ…。
あ、この記事を書いたのは私でした\(^o^)/
でもでもでも、キーポイントで列車が登場するっていうのは合ってたから、ね?
衝撃の上塗りでぶん殴ってくるような回でした。「神回」とは少し異なる「奇回」と呼ぶべき回だったように思います。
6話のサブタイトルが物語る作品の肝
何から書き出そうか…という感じですが、6話全体の主題が今話のタイトルである「言葉は閉じ込めて/言葉で閉じ込めて」に凝縮されているように感じたのでそこから考察していきます。
結論から述べると、前者は侑の、後者は燈子の想いが凝縮されています。
Bパートの最後では、燈子の想いに気が付いた侑が燈子に「これまでも、これからも先輩のこと好きにならないよ」と告げています。ただし、この後侑は「寂しいから嘘をついた」という思いを抱いています。
つまり、”好き”までたどり着かないとしても侑の中で既に燈子は”特別”になってしまっているんですね。
でも、それを告げると燈子は自分の元から離れてしまいます。河川敷で侑の顔を一切見ないまま歩み出したように。
だから、侑は「好きになりたい」という言葉を閉じ込めました。もう少し掘り下げると「私は変わりたい」という言葉までも閉じ込めました。変わってしまうと今の関係を維持できなくなってしまうから。
侑目線で見た今回の話の心情を一言で表すのならば、”言葉は閉じ込めて”
になります。
一方の後者。5話まででもそれとなく燈子が侑を好きな理由は明かされていました。
5話まではざっくりと「侑は”特別”を知らないからこそ、侑のことが好きだ」という燈子の想いが読み取れましたが、6話ではじめて燈子の心情が語られたことでこの部分が形となって語られました。
燈子の心情のすべてがCパートで明かされています。
燈子(好きって暴力的な言葉だ。こういうあなたが好きって、こうじゃなくなったら好きじゃなくなるってことでしょ?
「好き」は束縛する言葉。だから、「好き」を持たない君が世界で一番優しく見えた。侑は実際とても優しい人だった。私をどこまでも受け入れて、ただ傍にいてくれる。この心地よさを知ってしまったら、もう二度と1人には戻れない。
これは束縛する言葉。ーどうか侑、私を好きにならないで)
こちら分かりやすいですね。”好き”という言葉を侑に浴びせることで、侑をそのままの姿でいさせようとしています。
自分のことを好きにならない、誰のことも好きにならない、それでいて燈子のことを嫌いにならない(≠好きになる)小糸侑という人間を”生かす”ために。
燈子のこれまでの行動を一言で表すと「言葉で閉じ込めて」
になります。
しかし、この燈子の行動は自分が心地よいからという理由によるものです。燈子が”好き””そのままでいて”という度に、侑は恐らくもがき苦しむことになります。
それでも、燈子にとって侑は女神のような存在だったわけで。「澪の分も頑張って」と言われる毎日から、自分のことを特別視しない人物にようやく出会えたわけです。
だから燈子を責めることなんて自分にはできません。それでも、侑の目線から見れば燈子はどこまでも”残酷でずるい”存在です。
見守る沙弥香、干渉する侑
6話で非常に分かりにくかったのは沙弥香の行動心理です。突如として侑に敵対心をむき出しにし、発言してきたように見えます。
2、3回見直して思ったのは沙弥香のAパートの態度、発言は侑に対する一種の宣言だったのではないかな、と思います。
「私はあなたとは違う方法で燈子を支えて見せる」という思いの宣言です。
燈子に対する態度は沙弥香と侑で180度異なります。沙弥香は燈子の「姉のような存在になる」という意思を尊重し、見守っています。
対して、侑は今回見られたように燈子のことを考え燈子に対して干渉していきます。
だからこそ、Aパートの沙弥香の態度は侑に対するある種の宣戦布告だったのかもしれません。それにしても茅野さんボイスも相まって怖すぎたぜよ…。
ここまで書いておいてアレですが、もしかすると単なる嫉妬爆発寸前みたいな感じだったのかも…?
燈子の心情が6話ではじめて明かされたように沙弥香が考えていることもまだまだ分かりません。今後に期待です。
1つだけ腑に落ちないのは、侑のポジションに立つ人間が沙弥香ではダメな理由です。
ストレートに考えると、沙弥香が燈子のことを好きであるということを、すでに燈子が感じ取っているため…となりそうです。その他にも考えられるのは
・沙弥香には恋人がいる?=すでに”特別”を知っている人間
・沙弥香は過去に燈子を救うことに失敗した
ぐらいでしょうか。個人的には2番目の意見を推しておきます。根拠はOPに映されている沙弥香が腕を伸ばしたけれど燈子は黙ってその場を去っていくシーンです。
まだ明かされていないだけで2人の間にはそういう過去があったのかな、と。
究極の「断絶」と踏み出せない「最後の一歩」~河原の描写を考察・解説①
ここからは映画と勘違いしそうなレベルの描写だったBパートの河川敷のシーンを紹介していきます。
まずはこれです!
侑の言葉に耳を傾けることなく、「小糸さんがいなくても劇はやるよ」と燈子が言った後の描写です。
石の数だけも2人の距離感があることを十分に表現しているのに、遠目から柱をうまく使って完全に2人を分断してしまっています。
もちろん、その後の侑の絶望に満ちた表情がいっそう心に来るのですが…。
こういった風景をうまく使って心情やキャラの距離感を表現する技巧はもう「すごい」の域を超えています。
燈子は石を一歩ずつ進み、とうとう岸の向こう側に燈子は足を伸ばそうとします。完全に川で分断されてしまえば、2人の距離は決定的に開いてしまいます。
しかし、燈子は侑の「寂しくないなら誰も好きにならなくていいもん!」という言葉を聞き、上げた足を戻します。
てっきり侑の言葉をそのままスルーして向こう岸まで進んでしまうと思ったので安心しました。
ここでも燈子のことを「ずるい」と感じるシーンがあります。侑が燈子に対していろいろな言葉を投げかけますが、そのどれに対しても燈子は反応を示しません。
燈子が反応を示したのは侑が「これまでも、これからも先輩のこと好きにならないよ」と言ってからでした。
好きにならないという言葉を聞いて、やっと侑の発言に反応する燈子…こいつはどこまでも…!
こう考えると、燈子が最後の一歩を踏み出さなかったのも彼女の策略なんじゃないかと思えてきます。侑の「好きにならない」という言葉を引き出すため、の。
”近づくほどに近づけなくなる”侑の想い~河原の描写を考察・解説②
こうして侑と燈子は石1つ分ずつ互いの方向に歩みだして距離感を取り戻していくわけですが…。
近づいて得た距離感は、侑にとって昨日までのものとは大きく異なるものでした。
侑は自分から「燈子のことを好きにならない」と宣言してしまっています。それも、”これからも”という言葉まで付けて。
つまり、昨日までの侑は「いつか自分にも”特別”が分かれば燈子のことを好きになるだろう」という想いを抱えて行動してきましたが、これからは「燈子に対する今の想いを変えてはいけない」という感情に変わってしまっています。
描写上二人の距離は近づきましたが、それは本当の意味での近づきではありません。
侑が自分から宣言してしまったことと、燈子が「好き」という言葉で束縛している以上、侑からアクションを起こすことができなくなってしまいました。
物理的には近づいているのに、侑が望んでいた本当の意味での”近づき”はなくなってしまったー。この絶対的な距離感こそが、最高に美しい夕焼けをバックにした2人の間の空間として描かれているように感じます。
感想:芸の細かさにも大満足!1つだけ言うとすれば…
これ以上書いていくとキリがないのでこの辺で筆を止めますが、その他にも「おっ」となる描写はたくさんあります。
例えば、Cパートで燈子が呼んでいた手紙。内容はラブレターなのですが、お相手の方が手紙で書いている内容ってすべて燈子が「澪」として作り出したものにすぎないんですよね。
作り出した”特別”を見る者と、相手を特別視しない侑がうまく対比されているように感じます。
こよみの小説も分析したいですが…。視力の限界ですorz
自分が6話を見て1つだけ言うとすれば。
僕はこのアニメがオリジナルアニメではないことが本当に悔しいです。
原作もまだ最終回にはなっていないそうですが、漫画ではすでにこの先ずっとの展開が描かれていて、既読者の方はそれを知っているということが言葉にできないもやもやになっています(笑)
既に漫画を読んでいる人からすると自分がしていることはただの後追いなんだなぁ…と。ここまで感じさせてくれるこの作品がすごいってことなんですけどね。
アニメ「やがて君になる」6話感想まとめと7話に向けて
というわけで、やがて君になる6話の感想記事でした。5000字…久々に書きました。
6話を視聴したことで、自分の中でスイッチが入ったので毎回これぐらいの記事量になるかもしれません。上ではああいう風に書きましたが、未読者の立場から既読者の方にも読んでいただける考察を書いていきたいので今後ともよろしくです(/・ω・)/
さあ、展開が読めない7話はどうなるのか。それでは、この辺で。
【追記:7話の感想・考察を書きました!】