やがて君になる 10話 感想&考察!溢れ出る想い、押さえつける言葉
第10話「私未満/昼の星/逃げ水」
ー余裕なんかない。だけど、嫌な感じじゃない(侑)
本格的に苦しくなってまいりました。澪の過去も判明し、とうとう物語はクライマックスへ向かいそうです。今回は情景描写に加え、セリフ回しにご注目。
というわけで、やがて君になる 第10話「私未満/昼の星/逃げ水」の感想と考察になります。10話までのネタバレがあるので、未視聴の方はご注意を!
(注意:管理人は原作未読です。ご了承を)
やが君 10話のあらすじ・ネタバレ
こよみの台本が完成します。記憶喪失の少女が主人公で、周囲の人が述べる”少女”の人物像はどれも違って…という物語でした。
台本の打ち合わせが始まり、主人公が燈子、恋人が沙弥香という役割になります。どことなく各人物の内面を表した内容と配役に、一同はそれぞれの思いを持ちます。
更に、夏休みに劇に向けて合宿をすることが決まります。燈子を茶化しつつも、少しづつ自分がしたい行動・言動を侑はできなくなります。願い事を書く短冊も、侑の物は真っ白のまま何も書かれていないのでした。
夏休みが始まります。燈子に連絡することもできず、侑はランニングをします。道中、同じ中学校だった菜月に会い、一緒に出掛けます。
燈子の愚痴をこぼし続ける侑に対し、”いっぱいいっぱいになって余裕がない”侑を見れたことに菜月は驚きます。七海家では燈子が父親からの言葉に反応してしまいます。
イライラが募る燈子はとうとう侑に電話をしてしまいます。侑は根本的に自分には興味が無いーと安心する燈子ですが、既に侑の心は…?
Cパートでは燈子の姉・澪について描かれます。燈子の幼少期、醤油を買いに行く際に事故に遭ったようです。燈子はこの情景を夢に見て、「自分は姉になる」という思いを再確認しました。
以上です。
10話の感想と考察
このまま話が進んでいくと崩壊するような予感がした第10話でした。侑と燈子の”想いの違い”が辛すぎる…。
すべてがすれ違う侑と燈子
10話の辛さのすべてがこの部分に凝縮されていると言っても過言ではありません。描写と合わせて侑と燈子の心情を整理します。
煌めく水玉と握った短冊
9話で走る燈子を見たあのときから、侑は「好き」という感情を持ってしまいました。
10話では一度も侑に「好き」「特別」というフレーズを語らせることなく、このことを上手に表現してくれました。
1つはAパートで燈子と話すシーンで随所に出てきた、煌めく水玉(水玉…だよね?)です。
3話の記事では「星」=「特別」であると解釈し、「きらきらしたもの」にも同様の意が込められていると考察しました。
侑にもそれが見えているのだとすれば…。星とは少し異なるものでしたが、既に侑も「特別」を超えた「好き」という感情を持っていることの証明になります。
もう1つは、同じくAパートの短冊です。白い短冊に侑は何も書くことができませんでした。
侑(願い事はあるはずだけど…奥の方でつっかえてうまく言葉にならない。書けたとしても…言えるわけないじゃんね)
もうこのセリフから侑が何を書きたかったか想像は付きますが…。あえて書くとすれば「燈子先輩を好きになれますように」ぐらいでしょうか。
この侑の感情は、昔の「燈子を好きになりたい」という感情とは全く異なるものです。
当時は、”特別”を知るべく燈子を好きになれたらなぁ…という思いだったのが、今は燈子を好きなのに好きになってはいけない状況に置かれています。既に好きなのに、好きになれない。苦しい、苦しすぎます。
そんな思いを握りつぶすように、侑は短冊を握ります。それは、9話でペットボトルを握ったのと同じように、自分の気持ちを押さえつける意図があったように感じました。
電話越しのすれ違い
そんなわけで侑は燈子が好きであるという思いをあえて言語化せずに抑えつけているわけですが、燈子はそんなことを知る由もなく…。
燈子は今でも侑が自分のことを好きではないと思っていますが、侑は今にも溢れそうな気持ちを押さえて行動しています。
侑は本当のところで自分には興味が無い、と断定する燈子に対する侑の返しが「もうどうでもよくなんかないよ」という台詞(この部分は1つ下の見出しでがっつり考察しています!)になっています。
結局、侑が自分の気持ちを抑えるべくそっけなく(見える)対応をすることで、ますます燈子は安心して…という悪循環。
侑が先輩と話すとぞわぞわすると感じていることなどまるで燈子は知らないんですね。侑の立場だと本当に辛いです。
このすれ違いは電話だから起こりうることです。相手の表情が分からないから感情を読むこともできません。今後この状態が続くようであれば、先に爆発してしまうのは侑なのかもしれません。
秀逸な2つのセリフ:究極のセリフ回し、ここに見参!
冒頭でも述べた通り、秀逸なセリフ表現が2つありました。特に侑の「もうどうでもよくなんてないよ」は作中でもトップクラスのセリフです。
「別にそんなの…」で続かない言葉
1つ目のぐっときたセリフが、Aパートでの侑と燈子のやり取りの中でのセリフです。
燈子が「侑に嫌われたくない」と言った後、侑は「別にそんなの…」と言いかけ、そこでセリフをやめてしまいます。
1つ上の見出しでも書いてきたことと重なりますが、ここも侑が自分のセリフを飲み込んだシーンの1つです。
てっきり、「嫌いになるわけないですよ」ぐらいの返しはすると思っていましたが、そのセリフすら述べません。
きっかけは間違いなく、8話の「嬉しい」のくだりでしょう。
何を言っても、燈子には悪く捉えられてしまうかもしれないから。あのときは持っていなかった”燈子を好きという気持ち”が漏れ出してしまうかもしれないから。
9話の記事でも書いたように、9話では侑が自分の気持ちに蓋をするような回想シーンがたくさんありました。今回も例に漏れずそういったシーンが多いです。
燈子との距離を置いて、自分の言葉を押さえないとダメなところまで侑の気持ちが進展しているのかもしれません。
「もう どうでもよくなんかないよ」の解釈
Bパートの最後を締めくくった「もう どうでもよくなんかないよ」という侑のセリフ。これにはいくつもの意味が込められているように感じます。
最初こそ、敬語ではなくタメ語を使う侑を表現したかったのかな、と思いました(その意味合いもあるでしょう)が、このセリフ自体にも意味があるように感じます。
この「もう」という台詞には二重の意味があります。
①接続語としての「もう」(特に意味のない言葉)
②”既に”という意味での「もう」
セリフ自体を聞くと、この「もう」には意味が無いように感じます(①の意味)が、侑の心情を根底において考えると侑の発言は
もう(=既に)どうでもよくなんかないよ
という意味合いに聞こえて仕方がありません。
10話では最後の最後まで燈子への好意を込めた発言を押さえてきましたが、最後にさらっとこういう形で言ったんですね。
もちろん、燈子にはこの”もう”には大した意味が無いように聞こえます。燈子に見ぬかれないぎりぎりのところで、燈子に対して告げた想いは侑のいじらしさを感じます。
同時に、ストレートに思いを告げられない侑の苦しい思いもやっぱり見え隠れしています。それでも、この発言をしたときの侑は柔らかな笑顔を浮かべています。
これは「言えてよかった」という意味の笑みでしょうか。しかし、侑の想いやこの表情は電話越しの燈子にはまったく伝わりません。もっとも、伝わってしまえばそこで終了なのですが…。
七海家のそれぞれの思い~両親の反応の違い
七海家の両親が描かれたのも10話のポイントでした。燈子の劇合宿に対する反応は、父親と母親で全く異なるものでした。
もちろん、燈子にとって劇をやるということは姉に近づく、もっと言えば「姉になる」ための大事なステップです。それを踏まえて考えてみます。
母親…劇(=燈子が姉になること)を肯定し、核心に触れないような話し方
父親…劇(=燈子が姉になること)をやんわり否定し、無理するなと話しかける
両親の燈子への反応は、澪の事故に直接的に関わったかどうかによって、違いが生じているような気がします。
あのとき、母親が醤油を買って来いなんて言わなかったら。あのとき、燈子がじゃんけんに勝っていなければ。「気を付けてね」という言葉をかければ、事故は防げたかもしれません。
母親と燈子は間違いなく「自分のせいで」姉は事故に遭った、と思い込んでいます。
だから、燈子は周囲の期待に応えるべく姉になろうとし、母親もそんな燈子に対して否定的な言葉をかけることはできません。
だって、これは自分たちが引き起こしたことで、自分たちで背負う「十字架」だから…という思いがあるような気がします。
燈子は当時はショートカットで、現在はロングヘアになっている部分はとても心にきます。姉の髪型を真似るべく、髪を伸ばしていたんですね。
一方、父親の視点は少し違います。事故の原因になっていない父親にとっては、燈子が背負っている「十字架」を理解できていません。だから、「無理するな」という言葉をかけ、燈子のことを自由にしようとしています。
母親の反応も、父親のセリフも責める箇所など1つもありません。ただ、おかれた境遇によってここまで反応が変わるのかと思わされた夕食の1シーンでした。
その他の描写について:菜月のセリフ、ゲーム、ドーナツ
最後にいくつか気になった描写と解釈を簡潔に紹介しておきます。
①菜月のセリフ「それがソフトじゃなかったのはちょっと悔しいけど…」
菜月との一連のやり取りは、「特別」が”人を好きになる気持ち”だけではないことを裏付けるようなエピソードになっています。
負けても泣くことが無い侑のエピソードは代表例で、当時から侑は「特別」(ここでの意味は”ソフトボールに熱中する思い”)に鈍感だったことがよく分かります。
短冊の色が白かったのは、燈子と出会う前の侑の心情を示したものだったのかもしれません。よく言えばニュートラルで、「特別な物」がない当時の侑を表現した色だったように思います。
②侑がやっていたゲーム
まさかのDS!!謎のキャラクターが登場するゲームでしたが…
地味にゲーム内で海と差し込む光の描写がなされている…!海と光の描写の考察については2話の記事をどうぞ。ということはこのキャラクターは侑…なのかな。
③残った2つのドーナツ
ドーナツ屋で、侑が最後の2つから選ぼうとしたタイミングで、燈子が好きな方を取っていってしまうシーンがありました。このシーンの明確な理由づけは難しいですが
〇侑には「燈子を好きにならないという選択肢」しかないことを表現
〇単に侑に「ずるい」と言わせるための演出
の2パターンの解釈を書いておきます。
特に後者については、侑は自分を好きにはならないという思い込みを持っている燈子への思いを込めた発言だったのではないでしょうか。
コメント&他ブログ様の紹介(12/9追記分)
皆様に多く読んでいただき、コメント等もたくさんいただいてとても嬉しいです!いただいたコメントのいくつかをこの場で紹介させていただきます。
まずはmostigerさんのこの部分を。
ゲーム画面のキャラは間違いなく侑でしょう。 燈子と夏休みに入ってから会えていないことで心が、海の深いところにいるように気持ちもイマイチ乗ってきていなかったのでしょう。
でも、燈子との電話中に「ざわざわ」している時に、足をバタバタさせていましたが、あれはゲームの画面では海底近くにいた侑が海面近くに浮き上がろうとバタ足をしているように見えました。
(当記事、コメント欄より)
太字部分の考察に痺れました。なるほど、そういう見方もあるのか…と。
続いてttttさん。原作との構成の違いについて教えていただきました。
原作では7年前の姉と燈子の回想は(アニメで言う)アバンに挿入されますが、 「(写真を見て)お姉ちゃんになるんだ…」というシーンと一緒に最後に持ってくることによって 姉が亡くなった事故を何度も思い出していること、姉になるという思いの強さが かなり強調されていました。
(当記事、コメント欄より)
自分は、ttttさんの考察に加え、アバンに重いシーンを置くことを避ける狙い(冒頭から夢の内容を見せられると重たい気持ちになる)こともあるのかな、と感じました。
更に、構成の違いについてえたんだーるさんが
原作では夢の内容を冒頭に置かないと夢の内容と教室の会話が月刊連載の違う話数に泣き別れてしまうという問題があります。
夢の内容を後ろに回せるのは、原作の複数回がアニメでは1話に構成されているからこそ可能な脚本なのですね。
(当記事、コメント欄より)
視聴者の方々は十二分に承知していることだと思いますが、こういう部分でも製作陣の方がこのアニメをいかに大切にして、作っているかが読み取れますね。
最後にやが君の考察記事を書いているはてなブロガーさんを紹介!
まずは、当ブログへの言及もいただいた(ありがとうございます!)ygkmさんの記事。
見どころは数多くありますが、ぜひチェックしてほしいのはサブタイトルへの考察になります。自分の記事では一切触れていない部分なのですが、非常に分かりやすく納得のいく考察がなされています。
次に、づかさんの記事になります。
見どころは自分も記事内で触れた水玉(シャボン玉)についてアジサイの色と合わせて考察している部分と、ゲームの画面の詳細な考察の部分ですね。
アニメ「やがて君になる」10話感想まとめと11話に向けて
というわけで、やがて君になる 10話の感想と考察でした。
…とても言語化するのが難しいエピソードでした。これまでで一番質が低い記事になった気がしてならないorz
円盤はBOXが貰えるHMVかAmazonでほぼ決めました。とっとと予約しなかったからポスターの配布がもう終わっていたという…。今週中には予約しちゃいます。
原作はまだ続いていると思うので、締め方が気になります。最終回終了後に「2期放送決定!!」ってならないですかね。そのためにも、自分は買い支えます。
次回も目が離せません!それでは、この辺で。
【追記:11話の感想&考察はこちらから!】