やがて君になる 12話 感想&考察!侑が辿り着いた”場所”と劇とのリンク
第12話「気が付けば息も出来ない」
ー私は七海先輩に、自分のこと嫌いじゃなくなってほしい!(侑)
ここまで深く見ていれば見ているほど味が出る、そんなエピソードと演出でした。新たな選択肢を侑は見つけ出し、彼女はとうとう「息も出来ない場所」へーー。
というわけで、やがて君になる 第12話「気が付けば息も出来ない」の感想と考察になります。12話までのネタバレがあるので、未視聴の方はご注意を!
(注意:管理人は原作未読です。ご了承を)
やが君 12話のあらすじ・ネタバレ
合宿は最終日を迎えます。劇中の少女と自分の「今」がリンクする燈子は鬼気迫る演技を見せます。燈子の様子を不安がる侑ですが、沙弥香は「燈子にとって悪いことではない」と告げます。
体育館での練習も終え、合宿は終了します。侑は燈子に「一緒に帰りましょう」と言います。更に、帰りの分岐路で侑は燈子に家に来ないか、と誘いました。
侑は改めて燈子を好きにも嫌いにもならないことを伝え、自分のことを信じてほしいと告げました。燈子は「甘えてしまうと思う」と言いつつ、侑の家へ足を運びます。
ともなく、侑の部屋で2人はキスをします。燈子はキスの後、市ヶ谷との一件を話し、別の人に聞けば違った姉の姿が見えるのかな、と侑にこぼします。
燈子「私は自分のこと、嫌いだから。私の嫌いなものを好きっていう人のこと、好きになれないでしょ?侑のこと好きでいたいの」
燈子の告げた言葉に、帰り際侑は思いっきり燈子に向かって「バーカ!」と叫びます。そして、侑はこよみに劇の結末を変える提案をします。
過去を基準にするのではなく、劇中で見せた”少女”を基に、”少女”は答えを出すべきだと侑は伝えます。こよみもそれに応えるべく脚本の訂正に入ります。
侑は”彼女”を変えたい、その一心でした。たとえ、それは”彼女”が望まないことだとしても。たとえ、それが自分の傲慢であったとしてもーー。
以上です。
12話の感想と考察
ここまでのサブタイトル、演出、展開。すべてが詰まったとても見ごたえのあるお話でした。尊さを超えた「何か」を見た気がします。
全ての場面について書いていきたいぐらいなのですが、膨大な量になってしまうので特に心に残った部分を中心に書いていきたいと思います。
隠されたセリフとサブタイトル
まずはBパートの燈子と侑のやり取りから振り返っていきます。
燈子は「私は自分のこと、嫌いだから。私の嫌いなものを好きっていう人のこと、好きになれないでしょ?侑のこと好きでいたいの」と侑に伝えました。
そして、侑が燈子と別れる際に、胸の内に抱いた想いは
(先輩だって…私の???なもののこと、嫌いって言わないでよ!)
というものでした。
???の部分は侑の「バーカ」がかぶさっているため、”正解”は分かりませんが、間違いなく”好きな”というフレーズが入ります。
燈子は自分のことが嫌いで、姉の代わりにならない自分を無価値だと信じ込んでいます。
燈子のセリフを分かりやすく噛み砕くと、自分が嫌いなもの(=燈子自身)を侑が好きと言ってしまえば、燈子はその人(=侑)を好きになれなくなってしまうから、自分のことは好きにならないで、という意味合いです。
ここまでもやっとしていた「燈子が侑に自分のことを好きにならないでいてほしかった理由」が綺麗に明かされました。
それと対比されているのが侑のセリフで。
燈子の「嫌いなもののことを好きという人は、好きになれない」という言葉はごもっともですが、侑の言う「自分が好きなもの(=燈子)を嫌いと言わないでほしい」という台詞だってその通りなわけです。
”???=好きな”というフレーズはバレバレなのに隠し続けている演出も良きです。
意地でも侑に「好き」というフレーズを語らせないぞ!というスタッフの熱い想いが伝わってきます。
きっと、侑に「好き」と語らせるのは燈子に告白するタイミングなのでしょう。
「対比」という観点でなくても、”???=好きな”が当てはまる根拠が最後に流れました。それは、侑が自室でプラネタリウムを流したこのシーンです。
これまでの侑は、星を天井に映し、星を手でつかもうとしていました。
当ブログでは再三述べていますが、「やが君」において”きらめている物”は”特別”を表現したものとなっています。
第3話のサブタイトルは「まだ大気圏」。侑が特別を知らなかった時代のものです。
現時点での侑には、その「星」をまだ掴むことができませんでした。
タイトルにもあるように「まだ大気圏」なんですね。宇宙という”特別”な場所には届いていないため、星を見ることしか今の侑にはできません。
いつか侑は星に手が届く日が来るのでしょうか。それとも…。
EDの中では侑の独白で、「燈子の近くにいるために諦めるものがある」と語っています。
”特別”に近づくために地球という住みやすい場所を離れ、危険な宇宙へ向かう。今後、侑が身近な「何か」を捨ててでも、特別を追い求める場面があるのかもしれないですね。
(引用:上記当ブログより)
3話時点での自分を褒めてあげたいと思ったのはここだけの話です(笑)
3話では星を客観的に見える位置(=息ができる大気圏)にいた侑は、燈子を「好き」になってしまったことで、大気圏を超えた星々の中(=息ができない宇宙)に行ってしまいました。
今回があるからこそ、3話のサブタイトルが活きてきます。
まさに12話のサブタイ通り、「まだ大気圏」の場所から、「気が付けば息もできない」場所まで入り込んでしまったんですね。侑は既に特別を知り、「好き」の中に入り込んでいます。
上記の12話のラストシーンはこのことを非常に分かりやすく表しています。既に侑は星の中(=特別)に入り込んでしまっているのですね。
作中で「唯一動いている」のは侑~劇の役割と沙弥香との比較から
それでは、”大気圏”を離れ、”宇宙”に行ってまでなぜ侑は燈子を「変えたい」と思っているのでしょうか。
もちろん「燈子のため」という意味合いもあるでしょうが、劇の結末を変えようとしたように、自分と燈子の間の結末を変えようとしたからではないでしょうか。
もう少し分かりやすく書くと、侑が燈子に告白できる結末を迎えるために燈子のことを変えようと試みたという解釈がちょうどいいと思います。
燈子が自分のことを嫌いで無くなれば、燈子も新しい一歩を、自分も新しい一歩を踏み出せます(燈子の発言の前提が変わりますね)。
侑が燈子を変えたいのは燈子のためでもあり、自分自身の「結末」のためでもあります。
もがいて行動をしようとしているのは12話を見る限りで、侑ただ1人です(こよみも侑よりの人間ですが)。特に侑と沙弥香とを比較するとよく分かります。
<コンビニでの2人>
侑…燈子がどうしたのかを問う(燈子をどうにかして、動こうという意思)
沙弥香…燈子にとって悪いことではないから私が見ておくと発言(現状維持)
<劇中の役割の比較>
侑(看護師)…スマホを見ること・色々な人の話を聞くことを提案(何かを変えようとしているように見える)
沙弥香(恋人)…あなたはあなたのままそこにいてほしいと告げる(現状維持)
とにかく何とかしようという侑と、このまま燈子に寄り添おうという沙弥香がくっきり分かれています。11話の花火のシーンで一瞬逆転したように見えた2人の立ち位置はあっという間に元通りです。
特に、劇中での沙弥香の立ち位置はもう言葉になりません。
花火をするシーン(リアル)では距離があったのに、劇中(演技)では寄り添って、手も重ねることができて。
沙弥香が何か悪いことをしたのかよおおおお!と叫びたくなるような皮肉っぷりです。
燈子を好きになれないエンドを乗り超えるべく、侑は行動を起こしました。この「行動を起こした」という事実を踏まえて、街中を走ってこよみの家に向かった侑を見ると不思議と目頭が熱くなります。
侑の挙動と心の動き~「あのシーン」を徹底解析
続いては、侑と燈子の濃厚すぎるキスシーンを振り返っていきます。
まずは、最初のキスシーンです。
これまでと大きく異なるのは、侑が「自分から」燈子の唇に向かっているということ。侑も気持ちが抑えきれなくなっていることを感じ取ることができます。
手に持ったアイスが溶ける演出は、2人のキスがそれだけ長く行われたことを示しているようにも、2人の間の熱がすごいことを示しているようにも感じます。
それでも、キスはアイスの影響もあり「冷たい」のです。
2人はそのまま抱き合いますが、この体勢がまた…。自分を見失い小さくなっている燈子に対し、そっと抱き寄せる侑。でも、侑は自分から強くは抱きしめられません。
誰かにならなければダメですか?と尋ねた侑に対し、燈子は目のハイライトが消えかかり、影が彼女を覆います。やっぱりこの表情は「嬉しかった」事件を思い出します。
その後、燈子からもう1度キスをします。ここが最大の見どころです。
燈子は侑に手を重ね合わせますが、侑は自分から燈子の手を握ることができません。それでも、1度は握ろうとしました(侑の手が動いているシーンがあります)。
更に、「侑は私のこと好きにならないでね」という発言に侑は口をぱくつかせるだけで何も語れません。
結局、燈子のあの表情が侑を再度縛りつけた、と言えそうです。
燈子の発言に対し、言葉で「分かっている」と告げた後、ようやく侑は燈子の手を握りました。言葉で「好きにならない」と告げたから。それを免罪符に侑は手を握ったのですね。
標識と十字路と踏切
12話では、展開面だけでなく道にあふれる「道具」も過去の流れを汲んだ物でした。
①「止まれ」の標識
7話でミラーに映った「止まれ」が再登場しました。
出てきたシーンは侑が燈子を家に誘う場面です。このシーンの面白いところは、最後の燈子の「かなり甘えちゃうと思う」という発言と共に、「止まれ」の標識が全て映し出されるところです。
それまでは「何か書いているな?」ぐらいですが、引いたアングルになってはじめて全体像が見えます。この「止まれ」は侑と燈子、どちらにかかった言葉なのでしょうか。
②4つに分かれた十字路
侑と燈子の帰り道には、十字路のマークも映し出されています。
この十字路は劇中の”少女”の立ち位置とマッチングしています。当初、”少女”は3つの選択肢から今後の自分を選ぶしかありませんでした。
しかし、侑の計らいで「第4の選択肢」が生まれることになります。前に進んでいく道だけが夕日に照らされて明るくなっているのもまた素敵だと感じます。
また、ygkmさんはこの部分を「十字架」として考察されています。自分には思いつかなかったとても面白い考察でした!
③踏切と電車ときらめき
12話の作画ランキングを付けるなら文句なしにこのシーンが第1位です!
何度も何度も、作品の「流れ」が変わるときには電車と踏切が登場しています。だからこそ、自分たち視聴者は踏切を見るとどうしても身構えてしまいます。
…完全にスタッフ陣の手のひらの上ですね。
思えば、はじめてのキスも電車が通過するあのシーンでした。それは、侑がはじめて「特別」に触れあった瞬間(当時の彼女はそのことを実感してはいませんが)です。
今回、電車が通過するシーンで侑は燈子との「これまで」を振り返ります。侑の思い出とともにたくさんのきらめき(=特別)も通過します。
求められて、拒絶されて、決意して、そして今回は何かを変えようとして。いつでも場面の転換期には踏切と列車が場面を彩ります。
劇の流れと訂正案を再確認
最後は蛇足かもしれませんが、こよみの劇がどう変わるのかを簡単にまとめておきます。11話記事でもこよみの「引っ掛かり」の理由を考察しましたが、遠からず近くもなく、といったところでした。
<当初>
記憶喪失になった”少女”が身近な3人から「自分」を聞き、恋人の語る「自分」(過去のもの)を選択して生きていく。
<訂正案>
記憶喪失になった”少女”は、「今」を基準に未来を見据え、生きていく。
”過去”ではなく、”これから”だというのは侑が燈子になってほしい姿とも重なっています。実はこれは既に劇中で”少女”(燈子)が「これからの自分を自分で選ばなきゃいけないのに、どうやって選んだらいいのか分からなかった」と言っています。
「過去を基準にして今を導くんじゃ、まるでこの劇の時間に意味がなかったみたいだ」…まさにその通りで、燈子がこのままの生き方をするのであれば侑と過ごした時間は一体何なんでしょう。
既に出ていた答えに近づいて、脚本は修正されます。<訂正案>に対し、生徒会一同がどのような反応を見せるのかが非常に楽しみです。
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というわけで、やがて君になる12話の感想と考察でした。
円盤買いました!ただ、注文したのがぎりぎりだったのもあり、発送予定が明日とのことです。最終回までには設定資料集を見たいなぁと思っています。
前回も書いたように、頃合いを見計らってBDについての記事も書きたいですね。
当ブログでは20作弱の感想・考察を書いていますが、最終回一歩手前で「最終回の予測」をしなかったのは多分はじめてです。
オリアニではないということもありますが、間違いなく素晴らしい締め方をしてくれるだろう、という信頼感があるからこそです。
原作に終わりが見えたその時、2期の放送発表があるはず…。それがいつになるかは分かりませんが、本当に楽しみです。
次回第13話が最終回となります。信じたくない思いも強いですが、とにかく楽しみです。それでは、この辺で。
【追記:最終回の感想・考察記事はこちらから!】